日光田母沢御用邸記念公園 | 皇室の記憶を刻む、三時代の建築美と静寂の庭園
世界遺産・日光の社寺からほど近く、杉並木の静寂に包まれた場所に、かつて皇室の方々が愛した別荘があります。
日光田母沢御用邸記念公園(にっこうたもざわごようていきねんこうえん)は、明治32年(1899年)に大正天皇(当時は皇太子)のご静養地として造営されました。 江戸・明治・大正という3つの時代の建築様式が見事に融合したこの場所は、国の重要文化財にも指定されています。
廊下に差し込む柔らかな光、職人の技が光る和洋折衷の空間、そして四季折々の表情を見せる庭園。歴史の息吹を感じながら、心穏やかなひとときを過ごしてみませんか。
歴史が織りなす「建築のパッチワーク」
この御用邸最大の特徴は、異なる時代の建物が一つに繋がっていることです。
- 江戸時代: 紀州徳川家の江戸中屋敷の一部を移築。
- 明治時代: 当時赤坂離宮などに使われていた建物を移築。
- 大正時代: 天皇即位に伴い、新たに増築された部分。
これらが違和感なく接続され、部屋数はなんと106室にも及びます。屋根の稜線が複雑に重なり合う外観や、時代ごとに異なる装飾のディテールを見比べるのも、歴史好きにはたまらない楽しみ方です。
和洋折衷のモダンな空間美
建物内には、当時の皇室生活を偲ばせる「和洋折衷」の空間が広がっています。
- 謁見所(えっけんじょ): 天皇が来客と面会した最も格式高い部屋。純和風の書院造りでありながら、床には英国製の絨毯が敷かれ、天井からはシャンデリアが吊るされています。
- 御玉突所(おたまつきじょ): いわゆるビリヤード室です。板張りの床に重厚な台が置かれ、当時の社交文化を今に伝えています。
- 丸窓からの景色: 廊下にある特徴的な丸窓から眺める庭園は、まるで一幅の絵画のような美しさです。
四季を映す名庭園
建物を囲むように広がる庭園も見逃せません。 特に春には、樹齢約400年と言われる見事なシダレザクラが咲き誇り、多くの人を魅了します。 秋には庭園全体がカエデやモミジの紅葉で彩られ、建物のガラス戸越しに見る景色は格別です。