鬼怒川の守護仏、佐貫観音院の神秘的な魅力
栃木県塩谷郡塩谷町、鬼怒川のほとりにそびえ立つ巨岩に刻まれた大日如来磨崖仏。「佐貫観音」の名で親しまれる佐貫観音院は、その雄大な姿で訪れる人々を魅了します。高さ64メートルにも及ぶ岩壁に、弘法大師が一夜にして彫り上げたという伝説が残る大日如来は、その大きさもさることながら、川の流れを見守るような優しい表情が印象的です。
佐貫観音院の歴史は古く、寛喜2年(1230年)に創建されたと伝えられています。かつては岩戸山慈眼寺観音院と称し、地域の人々の信仰を集めてきました。明治時代の廃仏毀釈により慈眼寺は廃寺となりましたが、観音院は宇都宮市の東海寺の別院として今もその敬虔さを伝えています。
参道を進むと、まず目に飛び込んでくるのは、巨大な岩壁とその中央に鎮座する磨崖仏です。近くから見上げると、その壮麗さに圧倒されるでしょう。岩の上部には奥の院である大悲窟があり、かつては貴重な宝物が納められていましたが、現在は62年に一度の御開帳となっています。
また、岩頭の北側には、自然の力か人工のものか、珍しい形をした「亀の子岩」があります。その名の通り、亀の子に似たユニークな姿は、訪れる人々の好奇心を掻き立てます。
佐貫観音院は、下野三十三観音霊場の第五番札所としても知られ、巡礼者も多く訪れます。静寂に包まれた境内は、日常生活の喧騒を忘れさせてくれる、安らぎの空間です。春には桜、秋には紅葉が彩りを添え、四季折々の美しさを楽しむことができます。