【データで”可視化”する栃木の実力】第1回:栃木県の「本当の顔」は”工業県”? 9.5兆円経済圏の実力を徹底解剖
目次
栃木県と聞いて、あなたは何を思い浮かべますか? 「日光東照宮」「那須の温泉」「いちご(とちおとめ)」「宇都宮餃子」… 確かに、それらは栃木県の魅力的な「観光・グルメの顔」です。
しかし、ビジネスの視点で見たとき、栃木県は全く異なる「もう一つの顔」を持っています。
それは、日本経済を支える「ものづくり県」としての顔です。
このシリーズでは、統計データという客観的な「数字」に基づき、栃木県のビジネスにおける「本当の実力」と「可能性」を可視化していきます。
第1回は、栃木県がいったい「どれくらいの経済規模」を持ち、「何で稼いでいるのか」という経済の”基礎体力”を解剖します。
1. 栃木の経済規模は「西日本の雄」を凌駕する。9.6兆円の実力
まず、栃木県が年間にどれくらいの経済活動(付加価値)を生み出しているかを示す「県内総生産(名目GDP)」を見てみましょう。
栃木県の県内総生産(2022年度): 9兆5,962億円
(出典:栃木県「令和4年度とちぎの県民経済計算」)
この「約9.6兆円」という数字。単独ではイメージしにくいかもしれませんが、他県と比較するとその「意外な大きさ」が見えてきます。
例えば、半導体産業の進出で今、日本で最も注目されている「熊本県」。 あるいは、西日本の工業・物流の要衝である「岡山県」や、日本海側最大の都市を持つ「新潟県」。
最新の2022年度データで比較すると、栃木県はこれらの名だたる有力県の経済規模を、実は大きく上回っているのです。
【県内総生産(名目)の比較 ※2022年度】
- 栃木県: 9兆5,962億円
- 新潟県: 9兆0,429億円
- 岡山県: 7兆3,450億円
- 熊本県: 6兆5,651億円
全国的なニュースで話題になる地域よりも、栃木県の方が経済のパイ(市場規模)はずっと大きい。「北関東の地味な県」というイメージを捨て、「東日本の隠れた経済大国」として認識を改める必要があるのかもしれません。
2. 最大の「稼ぎ頭」は? 産業構造で見る"栃木の強み"
では、その「約9.6兆円」は、どのような産業が生み出しているのでしょうか。
産業構造(第1次・第2次・第3次産業の構成比)を、全国平均と比較してみましょう。
【栃木県と全国の産業別構成比(2022年度)】
| 産業分類 | 栃木県 | 全国平均 |
| 第1次産業 (農業,林業など) | 1.5% | 1.0% |
| 第2次産業 (製造業,建設業など) | 39.6% | 25.3% |
| 第3次産業 (サービス,小売など) | 58.9% | 73.7% |
(出典:内閣府「2022年度国民経済計算」、栃木県「令和4年度県民経済計算」)
このグラフが、栃木県の「本当の顔」を明確に示しています。
注目すべきは「第2次産業」の割合です。全国平均が約25%であるのに対し、栃木県は約40%と突出して高いことがわかります。(この比率は、滋賀県などと並び全国トップクラスです)つまり、栃木県経済の「エンジン」は、観光やサービス業以上に、圧倒的な「製造業」の力によって動かされているのです。
「いちご王国」であると同時に、「工業県」である。これが栃木県の真の姿です。
3. なぜ栃木は「ものづくり」に選ばれるのか?
では、なぜこれほどまでに製造業が栃木県に集積しているのでしょうか? 県外の企業が「拠点」として栃木を選ぶのには、明確な理由(=立地優位性)があります。
理由1:圧倒的な「地の利」(アクセス)
- 首都圏との近さ: 東京から100km圏内という、大消費地・首都圏への絶好のアクセス。
- 交通の大動脈: 東北自動車道と北関東自動車道が県内で交差し、縦(東北)にも横(茨城の港・群馬)にも物流網が広がっています。
理由2:強靭な「インフラ」
- 豊富な工業用水: 那珂川、鬼怒川といった河川がもたらす豊富な水資源は、工場にとって不可欠です。
- 災害リスクの低さ: 内陸県であるため津波のリスクがなく、地震や台風による被害も比較的少ないとされており、企業のBCP(事業継続計画)の観点からも優位です。
これらの理由から、古くから自動車産業(本田技研工業、SUBARU)、機械・部品産業が集積。近年では医療機器(キヤノンメディカルシステムズなど)や医薬品、食品(カルビー、森永製菓など)の大規模な生産・開発拠点が次々と立地しています。
まとめ:栃木県は「二つの顔」を持つハイブリッド経済圏
今回のデータをまとめると、栃木県は以下の特徴を持つことがわかります。
- 経済規模は「約9.6兆円(2022年度)」で、話題の熊本県や岡山県、新潟県を凌駕するマーケットを持つ。
- 経済の約4割を「製造業」が占める、日本有数の「工業県」である。
- 「首都圏への近さ」「交通網」「災害リスクの低さ」から、企業の生産拠点として最適である。
県外のビジネスパーソンにとって、栃木県は「観光地」であると同時に、「巨大な製造業クラスター(=優良な営業先・提携先)」であり、「首都圏に近い優れたビジネス拠点(=進出先)」という二つの顔を持っているのです。
次回(第2回)は、この栃木県の「大黒柱」である製造業の中身をさらに深掘りし、「自動車」や「医療機器」など、どの分野が栃木の経済を力強く牽引しているのかを分析します。




