【データで”可視化”する栃木の実力】第2回:「栃木の給料」を支える大黒柱は誰だ? 製造品出荷額9.5兆円の内訳

目次

前回、栃木県は経済規模が大きく、その中核を「製造業」が担っていることを解説しました。 では、栃木県の工場では具体的に「何」が作られ、どの産業が私たちの雇用や給料を支えているのでしょうか?

第2回は、企業の売上規模を示す「製造品出荷額等」の最新確報データを紐解き、栃木経済を動かす「3つの巨大なエンジン」と、エリアごとの産業地図を可視化します。

※本記事のデータは、経済産業省「2023年 経済構造実態調査(2022年実績)」に基づきます。

1. 栃木で作られるモノの総額は「年間9兆4,783億円」

まず、県内の工場から出荷される製品の合計金額(製造品出荷額等)を見てみましょう。

栃木県の製造品出荷額等(2022年実績): 9兆4,783億円

(出典:経済産業省「2023年 経済構造実態調査(製造業事業所調査)」)

この「約9.5兆円」という規模は、全国で第12位です。 関東地方では、神奈川・千葉・茨城・埼玉・群馬といった巨大工業県に次ぐ位置にあり、北関東工業地域の一角として、日本有数の生産能力を誇ります。

9.5兆円といってもピンと来ないかもしれませんが、これは北陸3県(富山・石川・福井)の製造品出荷額をすべて足した金額(約9.9兆円)に匹敵する規模です。 それほどの「モノづくり力」が、栃木県一県に集中しているのです。

2. 圧倒的王者「自動車」。しかし"一本足打法"ではない

では、その中身(内訳)はどうなっているのでしょうか。 産業別の構成比を見ると、栃木県の強みと特徴が浮き彫りになります。

【栃木県 産業別製造品出荷額の構成比(上位4分野)】

  • 輸送用機械器具(自動車・航空機など): 40.7% (約3.8兆円)
  • 飲料・たばこ・飼料 + 食料品: 10.5% (約1.0兆円)
  • 生産用機械器具(産業用ロボットなど): 8.8% (約0.8兆円)
  • 化学工業・プラスチック(医薬品など): 8.6% (約0.8兆円)

(出典:栃木県「令和5年(2023年) 経済構造実態調査 結果概要」より算出)

■ 第1の柱:輸送用機械(約4割)~世界の車がここから生まれる~

やはり最大の柱は「自動車関連」です。県全体の約4割、金額にして約3.8兆円を稼ぎ出しています。 日産自動車(上三川町)、本田技研工業(ホンダ・芳賀町/真岡市)、いすゞ自動車(栃木市)の完成車工場に加え、SUBARU(航空宇宙・宇都宮市)など、世界的なメーカーの拠点が集積しています。 この「3.8兆円」という単一産業の規模だけで、高知県や鳥取県の「県全体のGDP」を上回るほどです。

■ 第2の柱:食料・飲料(約1割)~首都圏の胃袋を支える~

意外と知られていないのが、食品産業の強さです。「食料品」と「飲料・たばこ・飼料」を合わせると、自動車に次ぐ第2の柱(約1兆円産業)となります。 豊富な「水」と首都圏への「近さ」を活かし、カルビー(宇都宮市)、サントリー(佐野市)、カゴメ(那須塩原市)などの巨大工場が稼働。 「東京で売られているお菓子やビールの多くは、実は栃木製」なのです。

■ 第3の柱:医療・化学(約8%超)~高付加価値な「頭脳」産業~

ここが栃木のユニークな点です。キヤノンメディカルシステムズ(大田原市)に代表される「医療機器」や、中外製薬(宇都宮市)、久光製薬(宇都宮市)などの「医薬品」製造が非常に盛んです。 これらは景気変動の影響を受けにくく、利益率が高い(高付加価値)産業であり、栃木経済の「安定性」と「平均年収」を下支えしています。

3. 地図で見る「産業クラスター」。あなたの街は何で稼いでいる?

栃木県は、地域によって「得意な産業」が綺麗に分かれています。これを地図上で見ると、戦略的な配置が見えてきます。

【中央・南東エリア】(宇都宮・上三川・芳賀・真岡)

  • キーワード:自動車・ハイテク・食品
    • 県内最大の工業集積地「清原工業団地」や「芳賀工業団地」を擁する心臓部。LRT(次世代型路面電車)が結んでいるのは、この巨大な産業エリアの通勤需要を支えるためです。

【県南エリア】(栃木・小山・佐野)

  • キーワード:トラック・建機・物流
    • いすゞ自動車やコマツの拠点があり、東北道・北関東道が交差するため物流倉庫も急増中。首都圏への「玄関口」としての機能が強化されています。

【県北エリア】(大田原・那須塩原)

  • キーワード:医療機器・精密機械
    • 「メディカルヒルズ」とも呼ばれ、世界的な医療機器メーカーが集積。高度な技術力が求められる製品を得意としています。

【県西エリア】(鹿沼・日光)

  • キーワード:金属加工・木工・環境
    • 古河電工(日光)からの歴史を持つ非鉄金属産業や、ナカニシ(鹿沼)のような世界的な歯科医療機器メーカーが存在感を示しています。

まとめ:栃木は「バランスの良い」ポートフォリオを持つ

今回のデータをまとめると、栃木県の実力は以下の3点に集約されます。

  1. 製造品出荷額は約9.5兆円(全国12位)。北陸3県の合計に匹敵する生産能力を持つ。
  2. 自動車産業が圧倒的だが、食品・飲料産業も強く、首都圏の消費を支えている。
  3. 医療・医薬品という「高付加価値産業」が県北を中心に根付いており、高度な技術集積がある。

県外のビジネスパーソンにとって、栃木県は「自動車一本足」に見えるかもしれませんが、実は「食」や「医療」といった不況に強い産業も併せ持つ、バランスの取れた産業構造をしています。

次回(第3回)は、これらの産業で働く人々の「リアルなお財布事情」に迫ります。 栃木県の「平均年収」は高いのか? 「有効求人倍率」から見る転職市場のチャンスは? データを使って、働く人の生活を可視化します。

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