
栃木県にも御座します!正月の来訪神、年神様の来歴とは
お正月に日本全国を周って福を運んでくれる年神様。その正体と来歴に迫ります。
いよいよ今年も終わりですね。
プレイヤーの皆さんも、ファンの皆さんも、
お正月の準備は万端ですか?
お正月と言えば、年神様をお迎えするために、門松を立てたり、鏡餅を飾ったり、おせち料理でおもてなししたりするわけですが、
そもそも年神様って誰なんでしょうか?
皆さん、ご存じですか?
いや、誰っていうのは変かな。
では、いったいどんな神様?
年神様というのは、元旦の初日の出とともに、一年の福を持って各家庭にいらしてくださる神様のことだそうです。
山から降りてくる先祖の霊(祖霊)や田の神、山の神とも言われています。
が、
実は、そのものずばり「年神様」「正月様」と呼ばれる神様がいらっしゃるのです。
その名も大年神
もう名前からしてそうですね。
グレート・年神様です。
さて、そんな大年神は、古事記に登場する神様です。
お父さんは、何とあの須佐之男命(スサノオノミコト)
お母さんは神大市比売(カムオオイチヒメ)
櫛名田比売(クシナダヒメ)のお姉さんだそうです。
(「あれ、クシナダヒメのお姉さんって全員ヤマタノオロチに食べられちゃったんじゃなかったっけ?」と突っ込んではいけません(笑)。
後述しますが、記紀や他の文献などに出てくる系図は、年代も名前も血縁関係もバラバラで、書物ごとに違っていると言っても過言ではないほどなんです)
ここに、古事記による大年神の系図をピックアップしてみました。
サラブレッド感溢れる大年神ですが、
神格は、農耕神、穀物神、恵方神だそうです。
時の神とかじゃないんだ~
大年神という名前から、筆者は、ギリシャ神話のクロノスみたいな時を司る神様的なのを想像していましたが、どうもそうではないようで。
ここで、年という言葉の語源を調べたところ、
「稲」や「穀物」を表す漢字――「禾」に「千」を組み合わせたものが段々変化し、今の形となったようで、本来「年」は穀物が実ることを意味するそうです。
そして、それが転じて実りの周期、即ち1年を意味するようになったとか。(漢和辞典より)
なるほど~。
だから、年神様=農耕神、穀物神
なんですね。
農耕民族の日本人らしい感覚です。
大年神は、同母の妹神が宇迦之御魂神(ウカノミタマノカミ)であり、この神様は、あの真っ赤な鳥居がずらーっと並ぶ幻想的な光景で外国客にも人気の伏見稲荷大社の主祭神で、伊勢神宮の外宮に御座す豊受大神(トヨウケノオオカミ)と同一神と言われています。
そもそも伏見稲荷大社は、全国に3万社あるといわれる稲荷神社の総本山ですし、大年神ファミリーの格が凄そう(笑)
叔母さん――と言っていいのか分からないですが――のクシナダヒメも田の神ですし、
穀物神、豊穣神の家系っぽいですよね。
ちなみに、後で出てくる大国主命(オオクニヌシノミコト)は、古事記だとスサノオの6世孫、日本書紀だとスサノオとクシナダヒメとの間の子です。
こういうふうに、系図は出展によって違ってくるのです(笑)
さて、そんなバリバリ豊穣神の家系出身で、お正月には日本の各家庭を周り、福を授けてくださるという優しくもありがたい大年神様ですが、
残念ながら、直に大年神を祀る神社は、栃木県にはないようです。
家系図から分かるように、出雲の神様っぽいですよね。
出雲の国は、現在の島根県あたり。
我らが栃木県からはちょっと遠いです。
ですが、ここはTOCHiGiFan
栃木に関連あることを探しますよ~(笑)
さあ、ここで、
日本の歴史や神話に詳しい方ならよくご存じのことと思いますが、八百万という非常に数多くいる日本の神様たちにはさらに別名が沢山あります。
これは、地方における神様の呼称の変化などの理由もありますが、前述の文献ごとに呼び名や表記が違うせいでもあります。
そして、それとは反対に、神様の系譜の位置や性質などが同じだと、
「この神様とこの神様は同一神です」
ということもよくあるのです。
何が言いたいか、もうお分かりですよね?
そう。
直接大年神が祀られている神社がないのなら、別名ではどう?
作戦です(笑)
行きますよ~
さて、こんなスーパー家系の大年神様ですが、
何と古事記には大年神が出てくる説話(エピソード)が全然ありません。
須佐之男命だったら、八岐大蛇退治とか、
大国主命だったら、因幡の白兎の逸話とか
何かそういう登場シーンとかありそうなものじゃないですか。
でも、大年神にはないのです。きれいさっぱり、すこーんとありません。
しかし、大年神については系譜が載せられており、古事記において、詳細な系譜が記されている神というのは限られているそうなので、やはり重要な神様っぽいですよね。
何で系譜だけあって、本編には出てこないのか問題については、今回は触れません。
が、大年神という表記はないものの、関係がありそうなシーンというのが古事記にはあるんです。
それが、こちら。
国造りが完成する前に、相棒だった少名毘古那神(スクナビコナノカミ)が突然常世国に帰ってしまったため、大国主命は嘆き、悩んでいました。
すると、そんな大国主命の前に、海を照らしながら神がやってきて、こう云うのです。
「私を祀れば国造りに協力しよう」
言われたとおりに大国主命が三輪山にその神を祀ると、無事国造りを終えることができました。
え、このエピソードってあれだよね?
って思った方、少々お待ちください(笑)。
この話のどこが大年神と関係あるの?
って思った方、
そう。さっきも言ったとおり、この話には大年神の名前は全く出てきません。
ですが、古事記では、この話の直後に突然大年神の系譜が出てくるそうなんです。
読んでる方からすると、
……誰?
って感じですよね(笑)
唐突な展開に戸惑いますが、順番通り素直に話を読めば、
この『海を照らしながらやってくる神』というのが、大年神のことなのかなあ
と思い至るわけです。
そして、古事記の記述では、この神様は、三輪山に祀られてましたよね?
はい、ここで、先程ピンときた方、正解です。
奈良県の三輪山の麓にある大神神社
三輪山をご神体とする日本最古の神社です。
ご祭神は、大物主大神
というわけで、大年神=大物主 説でした。
大物主大神は、金毘羅さんのご祭神としても祀られているので、これなら栃木県にも複数あります。
栃木県の場合、金毘羅ではなく『琴平神社』となっていますね。
しかし、それだけではありませんよ~
栃木市にある大平山神社
ご祭神は、瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)、天照皇大御神(アマテラスオオミカミ)、豊受姫大神(トヨウケヒメノオオカミ)を中心とする多くの神々で、とても由緒ある大きな神社ですが、
その縁起に、
『垂仁天皇の御代に、大物主大神と天目一大神(アマノマヒトツノオオカミ)が三輪山(現大平山)に鎮座されたのが始まり』
とあるのです。
三輪山ですよ、大物主大神ですよ!
そのまんまじゃないですか~
現在は、境内の『三輪神社』に大物主大神、『奥宮』に天目一大神がおられるようです。
民俗学的には、こういう同じ地名や神社などがあるところは、その地に同族がいたり、同じ氏族が移動してきた痕跡などと言われています。
遠いと思っていた出雲、大和(現奈良県)と栃木県(当時毛野国?)が繋がっていると思うと、面白いですよね。
お正月に日本全国へ福を授けに行く大年神様
そんな優しい大年神様に、たまにはこちらから会いに行ってみるのはいかがでしょうか?
※但し、ここで、
大国主命のところに『海を照らしながらやってくる神』のエピソードは、日本書紀にも同じ記述があり、そちらの方の神は、大国主命に向かって、
「私はあなたの幸魂(さきみたま)・奇魂(くしみたま)」
と言っています。
なので、一般的には、大物主=大国主の和魂(にぎみたま)と言われていますね。
神道において、幸魂・奇魂は、二つ合わせて和魂といい、神様の優しい側面みたいな意味です。
幸魂は、人に幸福をもたらすもので、
奇魂は、人に霊力など不思議な力を与えるもの、だそうです。
それに対して荒魂(あらみたま)というのがあり、これは神様の荒々しい側面(天変地異を起こすとか)を表しています。
※
大年神は、この他にもニギハヤヒ説、アメノホアカリ説があったり、陰陽道の年徳神と習合して、恵方神とも呼ばれています。
年徳神のいる方向が恵方だそうですよ。
さて、年神様から強引に栃木に話を持っていきましたが(笑)
こういう話も地元に関係してたりすると、何か身近に感じたりはしませんか?
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
それでは、皆さま
良いお年を
TOCHiGiFan編集部
ライター:akari
RELATED SPOT
関連するスポット

太平山神社
- 栃木市
- 歴史・伝統
太平山神社は、瓊瓊杵命(ににぎのみこと)、天照皇大御神(あまてらすおおみかみ)、豊受姫大神( …
