音響の魔術師が子供たちを救う!小山市の学校改善計画とは

株式会社リッツコーポレーション

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小山市でカーオーディオの専門店を経営する高橋 昭氏。長年培ったノウハウと卓越した技術力を活かして、小山市の学校の環境改善に努めていらっしゃいます。国会議員も話を聞きに来るその方法とは? 他にも製品誕生秘話などに迫ります。

 

本日は、株式会社リッツコーポレーション 代表取締役 高橋 昭さんにお話を伺いしました。

高橋さんは、55年前、小山市神鳥谷でカーオーディオ専門店を開業しました。以来、一貫してカーオーディオの店を続け、全国のオーディオファンから愛されています。

また、高橋さんはオーディオだけではなく様々な製品の開発も手掛けており、大手メーカーと共同開発したものや、オリジナリティ溢れる人気商品が多数あります。

現在は、新たに独立した店舗を運営しながら、市の要請で小山市の学校の環境改善に努めるなど多方面に活躍中です。

それでは、高橋さん、よろしくお願いします。

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株式会社 リッツコーポレーション 正面

日本初のカーオーディオ専門店

――リッツコーポレーションさんは、最近引っ越されたばかりとお聞きしました。以前は駅南町にお店がございましたよね?(編集注:旧店名は『サウンドテック高橋電機』

高橋さん: そうです。11月1日に越してきたばかりで。まだ仕事は掃除と搬入ばかりやってます(笑)。(注:取材時は11月中旬)
駅南町の店舗ですが、私も73歳という年なのでね、いつまで社長として頑張れるか分からないので、社員と相談しまして、社員が新会社として『株式会社サウンドテック』を立ち上げました。旧社名のサウンドテックは彼らに譲り、また駅南町の店舗の方がお客さんもよく知っておられるし、設備やら何やらも揃っているので、それも譲りました。そちらの方は、現在私は大家さんです(笑)

――そうだったんですね。お引越しというか、社員の方が独立したというか……

高橋さん: 商工会議所にも「社長の方が出ていくなんて前代未聞」と言われましたよ(笑)。駅南町の店舗の2階でやってても良かったんですけどね。でもまあ、前社長がすぐ側にいたのでは、彼らもやりにくいでしょうから。それにここ、神鳥谷は私が初めて店を出した場所なんです。神鳥谷で5年、駅南町で50年。50年後、また最初の場所に戻ってきた、というような気持ちです。まあ後100年生きることはできませんが、何か社会のお役に立つことができたらいいなと思っています。

――まさに時は巡るという感じがしますね。そして、創業55年ですか!プロ中のプロですね。ずっとカーオーディオ専門でやっていらっしゃったのですか?

高橋さん: そうですよ。恐らく日本のカーオーディオ専門店第1号だと思いますね。

――日本初ですか!日本で初めてのお店が、栃木県のこの小山市にあるというのも感慨深いです。高橋さんは、何故、当時は存在しなかったカーオーディオの専門店をやろうと思ったのですか?

高橋さん: 実は私は福岡出身でしてね。炭鉱の町でした。『青春の門(注:五木寛之著の小説)』みたいな。父親がそこの工場の管理をやっておりまして、その関係で福岡から高崎と、子供の頃は転校を繰り返し、ここ小山にやってきました。そうして、しばらくして私が高校を卒業する段になると、父がこう言ったんです。
「この小山には色んな会社が沢山ある。何でもやれるぞ。どんな職業に就きたい?」
私はそれまで大学の二部(注:夜間部)に行こうかとも考えてたんですけど、そう訊かれたので、
「カーオーディオの店をやりたい」
と答えました。
オーディオが好きなので、それに携わる仕事がしたいと思ってたんです。でも、オーディオ専門の店は既に沢山ある。今更そこに食い込むのは難しい。そこで、まだ誰もやっていないカーオーディオ専門の店がいいだろうと。

――それで日本第1号なんですね。目の付け所が良いというか先見の明があるというか、そういうところが成功の秘訣なんでしょうね。

高橋さん: ははは。そうでしょうか。それで、私がそう答えたらすぐに父は、「この人に会ってみろ」とある人のところに行くように言ったんです。
実はその人はクラリオン(注:フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社)の副社長で、当時私は何も分からないまま、言われたとおりに上京し、目白の椿山荘でその人に会いましたよ。

――さらっとクラリオンの副社長さんが出てくるというお父様も只者じゃないです。そして、高橋さんはそのときまだ高校生ですよね? いきなり椿山荘に呼び出されるとは、めったにない体験でしたね(笑)

高橋さん: 全くです(笑)。で、副社長との話も進みつつ、でも、私はまだ二部への進学と迷っていました。そんな折、父が突然倒れて、亡くなってしまったのです。49歳でした。それで、進学はやめて、父が言っていた道を進むことにしました。一番最初の私の店の名前は『クラリオン小山高橋電機』です。

――お父様のご遺志みたいなものだったのですね。

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高橋 昭 さん

子供たちを救え!

――高橋さんは、音響に関するノウハウと高い技術力を買われて、地元の学校の音響設備の改善をしていらっしゃるとお聞きしました。先日も、国会議員の方が高橋さんの話を聞きにいらしたとか。

高橋さん: ああ、そうですね。国会議員と教育委員会と自治体だか何だかの人が来てましたね。

――国会議員まで来るなんて凄いじゃないですか。その人たちが聞きたがる学校の音響の改善とは、一体どういうことをやっていらっしゃるのでしょうか?

高橋さん: 正確には音環境改善といいます。専門的な言葉になりますが、音には位相というものがありましてね。このスピーカーのコーン紙を前へ前へと出すようにしている音が正位相、後ろに下がるように下がるように出す音を逆位相と呼びます。反対の位相の音同士でぶつけると音が消えるんですが、実はスピーカーの間の中央辺りは相殺してますけど、両端は残ってしまう。ちょっと実験してみましょう。ちょうど今、クリスマスの曲がかかっていますから、これで行きましょうかね。

※ここで高橋さんは、実際にスピーカーの配線を繋ぎ変え、正位相と逆位相の組み合わせのパターンを聞かせてくれました、

――正位相と正位相にすると、音が大きくはっきり聞こえて……、何というか、明るい、わくわくするような感じに聞こえます。

高橋さん: そうですね。でもボリュームはずっと同じなんですよ。では、今度は逆位相の音です。後ろに下がるように下がるように出しても音は聞こえるんです。

――きれいな音ですけど、少し寂し気というか、マイナーな音という感じです。

高橋さん: そう、冷たい音になります。良い音かもしれないけど、何となく雰囲気が好きじゃない。それでね、私、さっきも音楽が鳴っている前で喋ってましたけど、今度はどうですか?

――さっきより聞き取りづらいような……

高橋さん: 良く聞こえないと思います。これがネガティヴ相の音ですね。でも、これはまだ許す。では、これからやるのが、片方だけ逆位相にした相対相です。

――うわっ。何かひっかかるような音に聞こえます。音も割れてるような、嫌な感じ。

高橋さん: これが学校には多かったんです。こんな音を聞かされ続ければ、子供たちはイライラし、落ち着きもなくなりますよ。この状態で集中して勉強しろというのは無理がある。先生の声も聞こえないし。子供の教育の場でそれが狂っているというと、均等な教育が受けられないことになってしまいます。

――ああ、座る席によっても聞こえ方が変わってきてしまうからですか?

高橋さん: そう。特に英語の検定試験みたいなもの場合、聞き取れないのと理解できないのでは意味が違ってくるので、そこはちゃんとすべきだと思ってました。結局、みんなにそういう認識がなかったのが原因なので、ここは一つ、そういうことを取り扱える資格制度を作って、対応していったらいい、とそういう話でしたね。

――なるほど。それは教育において非常に重要なお話ですね。さきほど実演していただいて、あんなはっきり違いが分かるものとは思ってもみませんでした。確かに子供たちへの影響はとても大きいでしょう。

高橋さん: 多動性障害と呼ばれているお子さんの原因の一つに、それがあるのではないかと最近言われていますね。そして、子供たちだけでなく、私が調整した後に、学校の先生からこんなふうに言われました。
「これまで大きな声を出さないと子供たちに聞こえないと思っていたのですが、最近はそんなに声を張り上げることがなくなりました。前の7割程度の声の大きさで済んでいます」

――先生にも効果があったんですね!

高橋さん: 学校の先生は、自分は地声が大きいと言って声を張っている人が多いですが、実は自分の声が聞こえないから大きな声になってしまっているだけなんです。耳を塞ぐと誰でも声が大きくなりますから。

――これはもう国を挙げて取り組むべきですね。急務だと思います。

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店内

発想力はなくならない

――高橋さんは、カーオーディオだけでなく、様々な商品の開発もされてますよね。

高橋さん: ええ。私は最初、20代のときは30代になったらもう駄目だろうと思ってたんですよ。30代になったら40代は駄目だろうと。でも、やってみたら、20代よりは30代の方が仕事ができるし、30代、40代と信用が上がってくるんですよ。
私がもう駄目と言っていることの一つは体力だったんですけど、これは50代になったら、ほんとに駄目でした(笑)それまで1日、5人から8人くらいまでは見積りを取れてたんです。それ以上は、体力的・精神的限界が来るという感じでしてね。それでお客さんに「これはちょっと考えておきますね」と宿題をもらう形にしてたんですが。それが、52、3の頃ですかね、2人目のお客さんにそう答えている自分がいて、ああ、これはもう駄目だな、と。
ただ、体力はなくなりましたが、圧倒的に増えているものがあるんですよ。それは、経験と人間関係。20代の頃とは比較にならない人との繋がりを持つことができました。そして、発想力。発想って年を取らないんです。

――それは素晴らしい。嬉しくなるような言葉をお聞きしました。

高橋さん: 発想力というのは、年をとってもなくならない。それで、私は、今までのノウハウを活かして色々なものを作りました。最初は他社の製品でしたけど、オリジナル商品や他社の製品を作ってきて――この制振材などは積水化学さんと共同で開発したものですね。これも自分が50代のときでした。
自分は売る力はないんですけど、積水化学さんとパートナーになったり、ソニーの国内営業本部長やセイコーの特許担当の方が自分のことをアシストしてくれることになったりと、本当に人との繋がりに恵まれました。

――発想力は年を取っても衰えず、長年増えていく人との繋がりでもって、新しい仕事もできるようになる。もちろん、高橋さんの発想力や技術力あってのことですが、中年以降の人生にも希望を持てるようなお話でした。
そういう中で、高橋さんの商品というと、プロの声優バレリーナの方なんかも着けているという『ピュアポイント』も有名ですが、あれはどういう経緯で生まれたものなのでしょうか?

高橋さん: ピュアポイントはですね、最初、こういう形の商品として作ろうと思ったわけじゃないんですよ。
お蔭様で、私の店には全国からオーディオマニアみたいな方が来てくださるわけなんですけど、そういうお客さんの中には、こういうことを言う人がいましてね。
「確かにきれいな音だけど、まだ魂が入っていない。心を揺さぶられるほどの音じゃない。もっと鳥肌の立つような音が欲しい」とか「車の中には独特のこもりがあるじゃないか」とか。
車のこもりは、車は元々こもっている電磁環境なんだからうちのせいじゃないと思いつつも、「カーオーディオでみんなに音を提供するんだったら、それも解決すべき」と言われて、それなら、分からないけどやってみようと試行錯誤を繰り返しました。今、原型を持ってきますね。そう、これには向きがあって、こっち向きに身に着けて何か言ってみてください。

――えっと、こんにちは。

高橋さん: 今度は逆向きにして。

――こんにちは。……あれっ?

高橋さん: どうですか? 反対にすると声が通りにくくないですか?

――そうです。こっち向きは、何だか音が詰まったような、途中までいくと消えてしまうような感じで。逆に最初の向きだと、普通よりも声が良く通る気がしました。

高橋さん: そうなんですよ。これを基にして実験に実験を重ね、数えきれないほど試作品を作りました。そして、何故だか分からないけど、あるとき音が響きだしたんです。専門家のようなうちのお客さんも「全然違うね」と言ってくれて。

――確かに。私も全くの素人ですが、違いがはっきり分かりました。

高橋さん: こうしてピュアポイントは、最初はカー製品だったんです。それで好評をいただいてたんですけど、あるとき、大工のお客さんに、「家に置くのは作らないの?」と言われましてね。
それから他のお客さんに、「身に着けられるものを作ってほしい」と。
私は、「嫌だよ。カーオーディオ以外は興味ないよ」と断っていたんですが、それはもうしつこくって(笑)。何度もここまで来ては言うんですよ。とうとう根負けして、屋内設置用とホルダーに入れて身に着けられるものを作りました。

――ああ、それで声優の方が着用されているのですね。声が良く通りますから。あれ、でも、バレリーナの方は……?

高橋さん: 身に着ける用を渡した人があるときこう言ったんです。
「あのピュアポイントって何あれ? どういうこと? 気持ち悪いんだけど」

――え……『気持ち悪い』、ですか?

高橋さん: その人は痩せ型の人なんですけど、その人が言うには、ピュアポイントを着けていて人にぶつかったりすると、相手が大柄な人でも、相手の方が後ろに下がるそうなんですよ。それまでは、彼の方がドンと弾き飛ばされていたのに。
そして、その人とは別に、自分の家の近くに実家があって、お母さんとおばさんとおばあさんが同居している人がいたんですが、そのおばあさんはもう100歳を超えていて、椅子から立ち上がるのすら大変だったそうなんです。トイレに行くにも立ち上がろうとするだけで疲れてしまうくらい。で、彼がそのおばあさんにピュアポイントを装着してみたら、何と彼の目の前で、おばあさんは5回も6回も立ち上がってみせたそうです。それで、「いいものができたねえ」と言って、すたすたトイレに歩いて行ってしまった。それを見たお母さんとおばさんが「私の分もほしい」と。

――それって、体にも効いてるということですよね?

高橋さん: 自分はそんなもんを作ったつもりはなかったんですけどね。今から、面白い実験をしてみましょう。――ここに方位磁針がありますね。北はこっち、と。ここに磁石を置いてみます、

※高橋さんは、テーブルの上に方位磁針を置き、横に大き目な磁石を磁針の針と並行になるように並べました。

高橋さん: 北はS極ですから、磁石のS極を同じ方向にします。すると、別に何ともありませんね。では、S極とN極を入れ替えてみます。今度はどうでしょう?

――声があまり良く聞こえなくなりました。詰まったような音に聞こえます。

高橋さん: 地球は巨大な磁石みたいなもので、南から北へ地磁気が走っています。その地磁気に沿うようにすると声の通りが良く、反対向きにすると悪い。つまり人間は地磁気の影響を受けているんですよ。そういうことに気づいちゃったわけなんです。

――人間には生体電流が流れているから、磁場の干渉を受けているということでしょうか。

高橋さん: そう。そうなると、良くしてあげたいと思いましてね。これがピュアポイントの原理です。世の中には電磁波が飛び交っていますからね。余計な電磁波の影響を受けなければ、人間の本来の力が発揮できるというわけなのでしょう。

――そういえば、渡り鳥なんかも地磁気を感知して飛んでいるといいますね。やっぱり人間も動物なんですね。

高橋さん: そういうことです。で、こういうメディアの発生装置など、電磁波には良いところも沢山ありますけど、さっきの学校の話にしろ、無知なままでいると子供たちを苦しめることになってしまうから、ちゃんと直した方がいいよね。

――確かに、仰る通りです。

高橋さん: 最近、東大とマサチューセッツ工科大学のメンバーが『人間は地磁気すら感じている』と証明しました。人間は五感以外感じていないと思っている人が多いでしょうが、それは間違いなんですよ。

――何だか凄い話を聞いてしまいました。皆さん――私も含めてですが――そういう話は頭では理解したような気になっているものの、現実にあるものとして認識できていなかったのではないでしょうか。それを実際に体感できるようにし、製品にまでしてしまった高橋さんには感服しきりです。

ひょうたんスピーカー(左)       ピュアポイント(右)
高橋さんのオリジナル商品

――最後に、栃木ファンの読者の方に向けて、何かメッセージなどいただけますか?

高橋さん: そうですね。私は朝永振一郎『科学の芽』の言葉が好きでしてね。何かを始めると、最初は周りからオカルトだのなんだの散々言われますけど、全員が反対する中でもアイデンティティをきちっと持ってやっていくと、みんなはついてくるよ、ということです。インチキ臭いと言われましたが、それを乗り越えてこなければ今日はなかったと思っています。

――好奇心と初志貫徹。花を咲かせるには、ブレない心が大事なんですね。

高橋さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。

 

ふしぎだと思うこと これが科学の芽です
よく観察してたしかめ そして考えること
これが科学の茎です
そうして最後になぞがとける
これが科学の花です

                           朝永振一郎

 

TOCHiGiFan編集部
ライター:akari

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栃木で活躍するプレイヤーや会社を深堀して皆さんにご紹介していきたいと思ってます。