平安のミステリー「室の八嶋」と、義経伝説が眠る街〜現代版「おくのほそ道」周遊ドライブ第1回〜
目次
はじめに
江戸時代前期、松尾芭蕉と弟子の曾良が奥州・北陸地方を巡った『おくのほそ道』。その軌跡は、日光街道を経由して現在の栃木県内にも色濃く残されています。
本シリーズでは、芭蕉たちが歩んだルートを現代の車で辿り、彼らが目にした歴史的風景の「今」と、周辺の新たな立ち寄りスポットを巡りながら、栃木の奥深い魅力を紐解いていきます。
第1回は、旅の序盤にあたる「小山・壬生エリア」です。平安時代から続くミステリーが息づく神社と、源義経の奥州逃亡にまつわる伝説の地、そして壬生町に誕生したばかりの美味しい洋食店を巡る半日ドライブへとご案内します。
歌枕の地「室の八嶋」と川霧の謎(栃木市惣社町)
小山市の間々田宿で一夜を明かした芭蕉一行が目指したのは、当時下野国随一の名所とされていた「室の八嶋(むろのやしま)」でした。現在は栃木市惣社町の大神神社境内に位置しており、30台分の専用駐車場を備えているため車でのアクセスもスムーズです。
境内に入ると、水を張った池の中に8つの小さな島が浮かび、それぞれに筑波神社や天満宮などの小さな社が鎮座しています。この地は平安時代以来、東国の「歌枕(和歌の名所)」として都の貴族たちにも広く知られていました。当時の和歌では「室の八嶋から立つ煙」が恋心などに例えられていましたが、これは実際の煙ではなく、気温と水温の差によって生じる「川霧」を煙に見立てたものだと言われています。
芭蕉もこの地で「糸遊(いとゆふ)に結びつきたる煙(けぶり)かな」という句を残しており、現在も境内にその句碑が建立されています。歴史ある景観が静かに保たれており、かつて都の貴族や芭蕉が感じたであろう神秘的な空気を今も味わうことができます。
のどかな田園に溶け込む歴史ロマン「金売り吉次の墓」(壬生町)
室の八嶋から壬生道(現在の日光西街道周辺)を北上すると、壬生町上稲葉のエリアに「金売り吉次(かねうりきちじ)の墓」が現れます。金売り吉次とは、源頼朝に追われる身となった源義経を奥州平泉へと導いたとされる伝説的な商人であり、この地で病に倒れ生涯を終えたと言い伝えられています。
この史跡は、芭蕉に随行した曾良の『随行日記』にも「壬生ヨリ楡木へ二リミフヨリ半道ハカリ行テ吉次力塚右ノ方二十間ハカリ畠中ニ有」と克明に記録されています。
現在も、のどかな田園風景の中に吉次の墓と、彼の守護仏であった観音様を祀るお堂が静かに残されています。日本史上の有名な伝説が、地域の何気ない日常の風景に溶け込んでいるのも、歴史ある栃木ならではの魅力です。
寄り道ランチ:地域の恵みを味わう「A le monde 斎」(壬生町安塚)
歴史探訪の合間にぜひ立ち寄りたいのが、壬生町安塚に新しくオープンした洋食店「A le monde 斎(あるもんでさい)」です。
東京で営業していた店舗の名前を引き継ぎ、家族で営まれているというこちらの小さなレストランでは、地元の新鮮な野菜をふんだんに使った丁寧な料理が楽しめます。メインディッシュに前菜、スープ、ドリンクなどが付いたコース仕立てのランチは、満足度が高くコストパフォーマンスにも優れています。歴史ある街並みを巡ったあとの、ゆったりとしたランチタイムにぴったりのスポットです。
周辺のおすすめ立ち寄りスポット
歴史探訪のドライブをさらに充実させる、小山・壬生エリアのおすすめスポットをご紹介します。
間々田八幡宮(小山市)
芭蕉一行が下野国(栃木県)で最初の夜を明かしたのが間々田宿です。静かな庭園の池の畔には「古池や蛙飛こむ水の音」の句碑が佇んでおり、旅の始まりを感じるスポットです。
摩利支天塚古墳(小山市)
芭蕉が通過した小山市飯塚エリアにある、県内最大級の前方後円墳です。5世紀末に築造された国指定史跡であり、墳上には摩利支天尊が祀られています。
みぶハイウェーパーク(壬生町)
北関東自動車道の壬生PAに併設され、一般道からもアクセスできる道の駅です。特産品や地元スイーツが豊富に揃っており、散策の休憩やお土産探しに便利です。
しもつけ彩風菓 松屋(壬生町)
壬生町安塚にある人気の和菓子店です。地元でも愛される本格的な和スイーツを提供しており、ランチの後のリフレッシュや、ちょっとした手土産の購入におすすめです。
おわりに
小山・壬生エリアは、平安時代から連なる伝説と江戸時代の文学的足跡が重なり合う、とても見どころの多いエリアです。車であれば半日ほどで史跡と美味しいランチを効率よく巡ることができるため、週末のちょっとしたお出かけルートとしておすすめです。
次回は、激しい雨の中で芭蕉が笠を新調したという伝説が残る「鹿沼編」。レトロな街並みが残る鹿沼の歴史的景観と、地域の名物である「お蕎麦」を求めてルートを進めます。


























