餃子の街」として全国に名を馳せる栃木県宇都宮市。しかし、栃木県の麺文化は餃子だけに留まらない。県内各市町村に目を向けると、そこには「焼きそば」を巡る熱き戦国時代が広がっているのだ。その名も「栃木やきそば戦争」。
じゃがいも入り、スープ仕立て、後がけソース…地域ごとに独自の進化を遂げたご当地焼きそばは、まさに群雄割拠。今回は、県民のソウルフードにして、知られざるB級グルメの覇権を争う個性豊かな武将たち(焼きそば)をご紹介する。

餃子の街」として全国に名を馳せる栃木県宇都宮市。しかし、栃木県の麺文化は餃子だけに留まらない。県内各市町村に目を向けると、そこには「焼きそば」を巡る熱き戦国時代が広がっているのだ。その名も「栃木やきそば戦争」。
じゃがいも入り、スープ仕立て、後がけソース…地域ごとに独自の進化を遂げたご当地焼きそばは、まさに群雄割拠。今回は、県民のソウルフードにして、知られざるB級グルメの覇権を争う個性豊かな武将たち(焼きそば)をご紹介する。
栃木県の南部では、焼きそばに「じゃがいも」を入れるのが常識。しかし、そのルーツやスタイルは微妙に異なる二つの勢力が存在する。
栃木市の「じゃがいも入りやきそば」は、戦後の食糧難の時代に、少ない麺でも満腹感を得られるようにと誕生したと言われる。最大の特徴は、「二度ぶかし麺」と呼ばれる独特の麺。この麺は、蒸したあとに一度冷ましてから再度蒸かすことで、独特の香ばしさとモチモチとした食感が生まれる。ホクホクに茹でられたじゃがいもと、この茶色く色づいた麺が、店ごとに工夫を凝らしたソースと絡み合い、懐かしくも奥深い味わいを醸し出す。隠し味にひき肉の出汁を使う店も多く、そのこだわりが元祖のプライドを支えている。
お隣の足利市も「ポテト入りやきそば」で知られるが、こちらは栃木市とは異なるルーツを持つとされる。市内の老舗ソース会社「月星ソース」の存在が大きく、甘みとコクのあるソースが、コシのある麺とゴロゴロ入ったポテトによく合う。市を挙げて「ポテト入りやきそばをひろめる会」が活動するなど、地域一丸となってそのブランド力を高めている。栃木市に比べ、麺のバリエーションやトッピングも多彩で、自由な気風が感じられる。
県都・宇都宮市は、餃子だけでなく焼きそばでも独自の文化を築いている。「宇都宮焼きそば」の最大の特徴は、「後がけソース」。提供される時点では薄味に仕上げられており、テーブルに置かれたソースを客が自ら追いがけして、好みの濃さに調整するのが宇都宮スタイルだ。
麺はコシのある太麺が主流で、モチモチとした食感が食べ応え満点。具材はシンプルにキャベツのみという店から、ハムや目玉焼き、イカなどを加えた豪華な「ミックス」が名物の店まで様々。麺を出汁スープで蒸し焼きにするなど、見えない部分にもこだわりが光る。自由度と懐の深さで、県央に確固たる地位を築いている。
県北の温泉地・那須塩原市塩原温泉郷には、全国的にも珍しい「スープ入り焼きそば」が存在する。その名の通り、ソースで炒めた焼きそばが、たっぷりの醤油ベースのスープに浸かっているのだ。
見た目は完全にラーメン。しかし、一口すすると、ソースの香ばしさとスパイシーな風味が口の中に広がり、紛れもなく焼きそばであることが分かる。鶏ガラや野菜で出汁をとった醤油スープとソース味が徐々に混ざり合い、一杯で二度美味しい摩訶不思議な体験ができる。この唯一無二のスタイルは、一度食べたら忘れられない強烈なインパクトを放つ、まさに孤高の存在だ。
宇都宮の西に位置する鹿沼市。ここで静かに勢力を伸ばしているのが、「ひき肉入り焼きそば」だ。
鹿沼の焼きそばは、比較的細めの蒸し麺を使用するのが特徴。そして最大の違いは、トッピングにそぼろ状の豚ひき肉を使うこと。ソースで炒められたシンプルな焼きそばの上に、甘辛く味付けされたひき肉が乗ることで、味わいにぐっと深みが増す。酸味の効いたソースとひき肉の甘塩っぱさが、細麺に絶妙に絡みつく。派手さはないが、計算され尽くした味のバランスが光る、玄人好みの焼きそばと言えるだろう。
あなたの心を捉えたのは、どの焼きそばだろうか? 「栃木やきそば戦争」は、まだまだ終わらない。今回紹介した以外にも、県内には隠れた名店や地域独自の焼きそばが数多く存在する。ぜひ栃木県を訪れ、この熱き戦いの目撃者となり、あなただけの「推しやきそば」を見つけてみてはいかがだろうか。
※当記事の内容は、一つの見解としてご参考ください。
※当記事で紹介している内容は、2025年8月7日時点の情報です。ご利用の際は、必ず公式サイトなどで最新の情報をご確認ください。